幕末オオカミ
「本当は、総司にも腹が立ってるんだからね。
妹の初接吻奪うなんてさ。
大変なことにならなくて、本当によかった」
「うん……ありがとう」
「これ以上、楓の初めてが誰かに強引に奪われるなんて、俺、嫌だからね」
「うん……」
こくりとうなずくと、平助くんも満足そうにうなずいた。
長い指を持った手で、あたしの頭を優しくなでる。
平助くん……そんなに心配してくれるなんて、いいやつ。
あたし、久しぶりに、友達ができたのかも……。
そう思って、せっかく、穏やかな気持ちになりかけたのに……。
「とか言って、本当は俺が狙ってたりして」
と、彼はささやく。
──ふわり。
その茶色の髪が目に入りそうになって、思わず目を閉じる。すると。
すくうように、あたしの唇に、平助くんの唇が、そっと触れた。