幕末オオカミ
「なんだと?」
局長は、あたしが斉藤先生や平助くんといるうちに、用があってでかけてしまったらしい。
他にだれもいない副長の部屋に、気まずい空気が流れた。
「なんでそれを早く言わなかった」
例の報告を聞いた土方副長はさして驚いた風でもなく、ただ不機嫌そうな顔をして、そう言った。
「副長は知っていらしたんですか?」
「あぁ、幹部は全員知ってる。
しかし、街中でこんなへっぽこくの一に見られるようじゃ、問題だな……」
おいおい、誰がへっぽこだって!?
あたしは心の中で、副長を二回殴った。
「とにかく、お前は余計な事を話すんじゃねえぞ。
沙汰があったら、追って知らせる」
「はぁ……」
しっし、と追い払われて、あたしはしかたなく蔵へ戻る。
もー、謎が多すぎるよ、新撰組……。
袴をはいた身体は、忍装束の時より少しだけ重い。
いつまで続くのかなあ、幹部の部屋と蔵だけを行き来する生活……。
もっと燃えるような任務を任されないものかな……。
「結果、出すしかないか」
とにかく、沖田の監視をばっちりやるしかないよね。
そんな事を考えながら、蔵に戻ると……。