幕末オオカミ
「……何してんの?」
「うぉわっ!!」
蔵の入口付近に、こそこそとしている大男がいた。
剣道の胴着を着ているそいつは、背が高すぎて、全く隠れられていなかった。
「沖田?」
「あ、あの、その」
「なによ」
「こ、これをだな、そこで、拾った」
大男……もちろん沖田は、あわあわと言いながら、一つの包みを差し出した。
竹の皮でできた包みからは、甘いあんこの匂いがする。
「拾ったって……」
「おおお、俺はいらないから、お前に、やるっ」
「はぁ?拾ったものを?」
「いいから、ほれ!うまいから食ってみろ!」
うまいからって……。
なんで拾ったものの味を、アンタが知ってるわけ?
キョトン顔のあたしにクルリと背を向け、沖田は怒鳴った。
「────昨夜は、本当に悪かった!!」