幕末オオカミ
「は、えっ……」
「では、御免!」
「ちょっと……」
沖田はこちらを振り返らず、のしのしと歩いていってしまった。
いや、走っていたのかもしれないけど。
足が長すぎて、歩いているように見えた。
「なんだ、あいつ……」
残された竹の包みを開く。
そこには、あんこがのったお団子が3本、乗っていた。
「うまそ……」
拾ったというわりには、包みはどこも汚れていない。
誘惑に耐え切れず、ほおばった団子は新しかった。
その証拠に、優しい弾力と甘みがした。
「ばーか……」
謝るなら、素直に顔を見て謝れよな……。
皆がいたから謝れなかったの?
で、胴着のまま、稽古を抜けて買いにいったわけ?
子供かよ……。
ふふ、と、唇から自然に滑り落ちたのは、自分でも不思議なことに。
穏やかな、微笑みだった。