幕末オオカミ
土方副長は、その時のことを思い出したのか、忌々しげな表情で話を続ける。
「もちろん、他の奴らには見えないように、裏から必死で隠したがな」
大変だったんだね……。
「あんなもののけが隊にいるなんて、忌まわしいにもほどがある。
それでなくても無理な金策、町人に対する横暴さで、会津候に目ぇつけられてるってのに」
「トシ、愚痴は後でいいだろう」
黙って聞いていた近藤先生が、やっと口を開いた。
「それでもなぁ。
壬生浪士組発足から、一緒にやってきたんだよ。
あの政変で芹沢さんが暴れてくれなければ、俺が暴れていたかもしれない」
「近藤さん……」
「新撰組の名をいただけたのも、あれがきっかけだからな。
俺達を有名にしてくれたのは芹沢さんかもしれない」
「違うだろ!!
組の名をいただけたのは、俺達が迅速な行動をとったからだろ!?」
「とにかく、この組を牽引してきたひとりであることは、間違いない」
近藤先生は、苦しそうに言った。
「しかしなぁ……もののけが前面に出て、街中で宴会を開いているのは、良くない。
もし隊以外の誰かに見られたら、新撰組はつぶれてしまう」
「…………」