幕末オオカミ


土方副長は、その時のことを思い出したのか、忌々しげな表情で話を続ける。



「もちろん、他の奴らには見えないように、裏から必死で隠したがな」



大変だったんだね……。



「あんなもののけが隊にいるなんて、忌まわしいにもほどがある。

それでなくても無理な金策、町人に対する横暴さで、会津候に目ぇつけられてるってのに」


「トシ、愚痴は後でいいだろう」



黙って聞いていた近藤先生が、やっと口を開いた。



「それでもなぁ。

壬生浪士組発足から、一緒にやってきたんだよ。

あの政変で芹沢さんが暴れてくれなければ、俺が暴れていたかもしれない」


「近藤さん……」


「新撰組の名をいただけたのも、あれがきっかけだからな。

俺達を有名にしてくれたのは芹沢さんかもしれない」


「違うだろ!!

組の名をいただけたのは、俺達が迅速な行動をとったからだろ!?」


「とにかく、この組を牽引してきたひとりであることは、間違いない」



近藤先生は、苦しそうに言った。



「しかしなぁ……もののけが前面に出て、街中で宴会を開いているのは、良くない。

もし隊以外の誰かに見られたら、新撰組はつぶれてしまう」


「…………」




< 147 / 490 >

この作品をシェア

pagetop