幕末オオカミ
ザバッ!!
「あ、はぁっ、ゴホッ……は、鼻に……鼻に入って……」
再度沖田の怪力で、あたしは吊り上げられた。
頭だけ水がめの中に入れられたと気づくのに、そう時間はかからなかった。
「もっと苦しい思いをさせてやろうか?」
土方の冷たい声に、背筋が震える。
あたしは今まで、敵につかまったことがなかったけど……。
任務から帰ってこなかった忍達は、皆こうして拷問されたのかな……。
どうする。
大奥にいた事実を話せば、城に戻され、手打ちにされる。
話さなくても、この責め問(セメドイ)の果てにあるのは、死、だ。
黙っていると、また沖田が縄に手をかけた。
頭の先が、水につく。
しかし、あたしは唇を結んだままだった。
どうせ、死ぬのなら。
忍であった誇りを守って、死のう。
そう決めたんだ。
母さん、父さん……。
今から、そっちに行くよ……。