幕末オオカミ
そして……。
久しぶりに、おしろいをはたき、薄く紅をひいた。
「八木さんの家では、自分でできんかったらあかんから」
そう言って、山崎監察は鏡に向かい、あたしに手取り足取り、化粧のいろはを教えてくれた。
「これが付け毛。
飾りは……今日はこれでええか」
そうして、あれよあれよという間に、あたしはただの町娘に変装させられた。
「よーし、頑張りますっ!」
「うん、期待してるわ」
ふんふんと鼻息を荒くし、あたしは幹部の待つ部屋へ入った。
土方副長と八木邸に正面から乗り込むためだ。
芹沢はあたしをしらないから、名前はそのまま、「楓」と名乗ることにした。
「どーもっ!お待たせしましたっ!」
「おっ……」
部屋にいたのは、山南先生以外の、試衛館派幹部と、斉藤先生。
全員、こちらを見て……沈黙。
「か、可愛いじゃないか!」
一番先にそう言ってくれたのは、やはり近藤先生だった。