幕末オオカミ


「おう、そうだな……」


「うん……」


「…………」


「………………なによ」



沖田はなかなか、出て行こうとしない。


だからなんなのよ。


じっと見つめていると、沖田は真剣な顔で口を開いた。



「……近藤先生はああ言ってたが、本当はもう、芹沢を斬ることは決まっている。

会津候じきじきに、沙汰があったらしい。

先日商家を焼き討ちにした芹沢に、もう我慢がならないんだろう」


「えっ……」



そんな。


土方副長が芹沢一派を追い出したいのは明らかだけど、近藤局長は「芹沢からもののけを追い出す手段」を探してほしいと言った。


つまり、近藤局長は芹沢を……助けようとしてる?



「近藤先生は優しい方だから、芹沢の暴挙は全て、もののけにとりつかれているせいだと思っている。

だから芹沢を助け、また一緒にやっていこうと、夢見てるんだ」


「……無理じゃん、会津様からもう沙汰があったんじゃ……」


「そうなんだよな。
けど、近藤先生はああいうお方だから……」



沖田はため息をついた。


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