幕末オオカミ

2.タヌキとキツネ



……てなわけで、あたしは八木邸にいる。



「素直に言われたら言われたで、気持ち悪いんだけどね~……」



最後の沖田の姿を思い出し、頬が熱くなってしまう。


あいつめ……ほんと、素直じゃないんだから……。



「楓ねーちゃんっ!!」


「うわっ!!」



突然後から声をかけられ、正気に戻る。



「なんだ、為坊たちか……」



あたしを見上げるのは、八木さんちの子供二人。


六歳の為三郎(タメサブロウ)と、三歳の勇三郎(ユウザブロウ)だ。



「ねーちゃん、あそぼー?」


「いや、あたし、仕事が……」


「母ちゃんはいいよって言ってたで?」



あらあら。


まぁ、いいか。


二人とも可愛いし、芹沢たちは巡察に出てるし。


その間は他の幹部が見張ってるって話だし……。



「よーしっ、何して遊ぶ?」


「やったー!」


「ほんならな、かくれんぼしよか!」



勇坊と為坊も、よっぽど溜まってるんだろう。


いつもは芹沢が怖くて、屋敷で大声をだすことはしないらしい。


< 164 / 490 >

この作品をシェア

pagetop