幕末オオカミ
2.タヌキとキツネ
……てなわけで、あたしは八木邸にいる。
「素直に言われたら言われたで、気持ち悪いんだけどね~……」
最後の沖田の姿を思い出し、頬が熱くなってしまう。
あいつめ……ほんと、素直じゃないんだから……。
「楓ねーちゃんっ!!」
「うわっ!!」
突然後から声をかけられ、正気に戻る。
「なんだ、為坊たちか……」
あたしを見上げるのは、八木さんちの子供二人。
六歳の為三郎(タメサブロウ)と、三歳の勇三郎(ユウザブロウ)だ。
「ねーちゃん、あそぼー?」
「いや、あたし、仕事が……」
「母ちゃんはいいよって言ってたで?」
あらあら。
まぁ、いいか。
二人とも可愛いし、芹沢たちは巡察に出てるし。
その間は他の幹部が見張ってるって話だし……。
「よーしっ、何して遊ぶ?」
「やったー!」
「ほんならな、かくれんぼしよか!」
勇坊と為坊も、よっぽど溜まってるんだろう。
いつもは芹沢が怖くて、屋敷で大声をだすことはしないらしい。