幕末オオカミ
「……為坊、勇坊、おいで。
お寺に遊びに行こう。
お母さんにはあたしから言ってあげるから」
あたしはお梅さんを無視し、イヤミを言われただけでビクビクしている二人に声をかけた。
「もう帰ってこんでもええし」
お梅さんは、あたしたちに聞こえるように、そんな事を言う。
って、元々お前の家じゃないだろ!
と、言ってやろうかと思ったけど……。
「今帰ったぞ!」
玄関から、声がした。
芹沢一派が、巡察から戻ってきてしまったんだ。
子供二人は、悲しそうな顔をして、「またね」と言うと、そそくさとどこかに行ってしまった。
「お梅、いるか?」
先頭を切ってきたのは、芹沢鴨。
でっぷりとしたお腹に、酒がたぷたぷと入っているようだ。
まさに古ダヌキって感じ。
昼間から酒のにおいをぷんぷんさせ、芹沢は部下たちと部屋に入ってきた。
「お、土方の姪っ子ではないか。
こんなところで何をしておる」
芹沢はあたしに話しかける。