幕末オオカミ
3.二人の副長
「はぁ?」
土方副長が、鬼のような顔であたしをにらむ。
「てぇとなんだ?
芹沢は新見にそそのかされて、どうにかしてもののけの力を自分で身につけたってことか。
そこまでしたにも関わらず、お梅のために隊を抜けたいと思ってる……
そういうことか?」
「はい」
副長室には、近藤局長、土方副長、そして沖田がいた。
「なるほど……
どこの派閥も、副長の方が悪知恵が働くということか。
おそらく新見はお梅をも操って、芹沢を意のままに操ろうとしているんだろうな」
「総司……てめぇ、今さらっと失礼なこと言わなかったか?」
沖田の言葉に、土方副長が目じりをぴくぴくさせた。
「すると……処断すべきは……」
「新見くんということになるな」
近藤先生が、断言する。
しかし土方副長はそれではおさまらない。
「いやいや、さっき永倉から報告を受けただろう。
芹沢は、押し借りを続けて、莫大な借金がある。
何のお咎めもなしに、除隊させられるかよ」
「それは、そうですが……」
「小娘は黙ってろ」