幕末オオカミ
ムカッ。何、その言い方。
せっかく、情報を仕入れてきたのに……。
「それより問題なのは、新見が近藤局長一派を殲滅しようとしていることです。
早くしないと、何らかの計画を立て、実行してしまうかもしれない。
まず、新見を取り調べることが先決かと」
あたしは負けずに、土方副長に意見した。
そう……芹沢はどこか、新見に乗せられているだけの節がある。
あれだけお梅さんに執着するのは、きっと、寂しいからだ。
新見が本当に自分の味方ではないことを、本能で感じているのだろう。
自分の持っているものの儚さを知っているから、自棄になって無茶苦茶な行動をとってしまうのもわかる。
新見さえ離れて、近藤局長たちとやりなおせば……芹沢は、立派な武士になれるかもしれない。
「土方さん、俺はこいつに賛成です。
まず新見を取り調べましょう。
もののけを身の内から追い出す手段も、知ってるかもしれません」
珍しく沖田があたしの言葉を後押しする。
「……そう、だな。じゃあ、近藤さん」
「なんだ、トシ」
「新見の取調べは、俺にやらせてくれ」
土方副長は、近藤局長を見つめた。
近藤局長は、何かをさとったかのように……。
こくりと、静かにうなずいた。