幕末オオカミ


叔父は、幕府の人間に人脈があった。


幕府とどんな取引をしたのかは知らないけど、ただの忍だったあたしは、いきなり大奥に入ることになってしまった。


「どこに売られたんだ」


「……吉原に決まってるじゃないか」


これだけは、ウソ。


吉原は、江戸の廓(クルワ)街。


女達が、男に身を売る場所だ。


「それが嫌になって、抜けてきたというわけか」


「はい」


そこがどんな場所か、あたしはまだ知らないけれど。


本当のことは、言えるわけがない。


「店の名は?」


土方がつっこんできた。


一瞬、ヒヤリとする。


「廓の女が年季が開けないうちに逃げれば、大騒ぎになっているだろうな。

さて総司、調べに行くか。馬をひけ」


「はい、土方さん」


「ま、待って待って!!
嘘です、ごめんなさーい!!」




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