幕末オオカミ


「どういうことだ!誰もおらぬではないか!」



店に着くなり、二階の部屋から新見の声が聞こえてきた。


芸妓がいないことに腹を立てているらしい。


あたしは屋根に上り、天井裏へ侵入し、成り行きを見守る。


そこへ、土方副長と沖田が登場した。



「新見先生」


「土方に沖田……!おのれ、何の真似だ」


「新見先生、あなたの日頃の行いについて、詮議させていただきます。
どうぞ、お座りください」



沖田が冷静に話す。



「それなら、屯所に呼び出せばいいものを。
何故こんなまわりくどい真似をする」


「普通に呼び出したって、来ていただけないでしょう。
無礼をしたことは詫びます」



と、全然詫びている雰囲気のない土方副長が、一番最初に畳に膝をつく。


だから、無礼だって、それ……。



「詮議とは、一体どういうことだ」


「芹沢局長の名を騙った多額の借金は何に使ったのか、そして……」


土方副長は、いきなり要点を話し出した。



「もののけの力を、どうやって授かったのかについてお聞きしたい」


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