幕末オオカミ
4.人狼の苦悩
「ってか、あんたが甘味好きとは意外だね」
「別にいいだろ……」
翌日の昼、八木邸近くの壬生寺にて……。
例の如く顔を腫らせた沖田と、女装姿のあたしは、仲良く並んで手ごろな石に腰掛けていた。
沖田は昨夜のお詫びに、今度はおまんじゅうを持ってきてくれた。
どうやら、なじみの店があるらしい。
「ふわぁ、おいひい~」
「ってなあ、そんなのん気にしてる場合じゃねぇぞ」
そうだ。
今朝すぐに新見切腹の報を受けて、芹沢は真っ青な顔をしていた。
事態は、すぐに動き出すだろう。
「しかし土方副長、あいつはマジ鬼だね」
「あぁ……早く止めてくれれば、殴られずにすんだものを」
「いやいや、そうじゃなくて……
新見の『詮議』をするとか言って……」
あたしはそこで口をつぐんだ。
新見は『自分で』切腹したことになっている。
表向きは。
芹沢の名を騙って莫大な借金をした責任をとった、とそういうことだ。
土方副長に追いつめられた、なんて、誰かに聞かれてはいけない。