幕末オオカミ


そう、店に買われた女たちは、そのお金を働いて返すまで、大門から出ることもできない。


もちろん、そのお金は利子がついて、ほとんどの遊女が返しきれず、一生花街にいることがほとんど。


だから見張りは厳しく、遊女が一人でもいなくなったら、町中大騒ぎ。


……この土方という男は、頭が切れる。


もう、ごまかしは通用しない。


「なあ、本当の事を言ってくれなきゃ、私も力になってあげられないよ」


お父さんのような近藤の優しい言葉に、涙がにじむ。


あたしはやけくそで、本当の事を話しだした。


「ほ、本当は……」


「本当は?」


「お、大奥にいました……」


三人は、目を見開いた。


そして、黙って顔を見合わせ……。


次の瞬間。


ブーッ!!


全員が、吹きだした。


「あ、あのなあ、嘘が下手すぎるだろ……」


最初にそう言ったのは、沖田だ。


懸命に、笑いをかみ殺すような顔をしている。


「あるわけがない。
お前のような、汚い小娘が……」


土方は遠慮なく、腹を抱えて笑った。


< 20 / 490 >

この作品をシェア

pagetop