幕末オオカミ
そう、店に買われた女たちは、そのお金を働いて返すまで、大門から出ることもできない。
もちろん、そのお金は利子がついて、ほとんどの遊女が返しきれず、一生花街にいることがほとんど。
だから見張りは厳しく、遊女が一人でもいなくなったら、町中大騒ぎ。
……この土方という男は、頭が切れる。
もう、ごまかしは通用しない。
「なあ、本当の事を言ってくれなきゃ、私も力になってあげられないよ」
お父さんのような近藤の優しい言葉に、涙がにじむ。
あたしはやけくそで、本当の事を話しだした。
「ほ、本当は……」
「本当は?」
「お、大奥にいました……」
三人は、目を見開いた。
そして、黙って顔を見合わせ……。
次の瞬間。
ブーッ!!
全員が、吹きだした。
「あ、あのなあ、嘘が下手すぎるだろ……」
最初にそう言ったのは、沖田だ。
懸命に、笑いをかみ殺すような顔をしている。
「あるわけがない。
お前のような、汚い小娘が……」
土方は遠慮なく、腹を抱えて笑った。