幕末オオカミ



「召集だよっ!
土方さんが、すぐ戻ってこいって!」


「えっ?」


「早く早く!」



平助くんはあたしの手をとり、ぐいと引っ張った。



「……楓だけか?」


「あー、総司いたの?
もちろん、総司も呼ばれてるよ。
急いだ方がいいんじゃね?」


「てめぇ……いたの?って……
この俺が見えなかったわけじゃあるめぇ……」



沖田は顔をひくひくと引きつらせた。


たしかに、こんな大男が見えないわけない。


しかし平助くんは平気でこんなことを言う。



「えーだって、こんな可愛い子がいたら、隣に狼がいようが、力士がいようが、気づかないよー。

俺、楓しか見えないんだ♪」


「へっ!?」


「な……」



もちろんこれは冗談だろうけど、あたしも沖田も絶句して固まってしまった。



「ぶっ、お兄ちゃん、固まってる」


「平助くん、冗談キツイよ……」


「冗談じゃないよ?
ねぇ総司、楓を俺のお嫁さんにちょうだい」


「……はぁぁ!?嫁だぁぁぁ!?」


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