幕末オオカミ
局長室には、すでに幹部が集合していた。
しかし、斉藤先生はいない。
多分、巡察に出ているんだろう。
「……会津候、松平容保様から、正式なお沙汰があった。
芹沢を……斬る」
土方副長が、近藤局長の代わりに言った。
幹部は全員、黙ってうなずく。
「ちょ、ちょっと待って……」
うろたえているのは、あたしだけみたいだ。
「芹沢は、引退しようとしてるんです。
新見がいなくなって、その決心が早くつくかもしれません。
もう少し様子を見ては……」
「総司、その小娘を黙らせろ」
「はい」
「ちょっ、おい……っ」
沖田はあたしの口を、その大きな手でふさぐ。
「一昨日のことが、もうお上に知れちまった。
昼間っからタヌキのしっぽを出すようなやつを、一日だって、会津藩御預にしておくわけにはいかねぇ」
土方副長は、表情ひとつ変えずに言い放つ。
そんな……昼間だったとはいえ、そんなにすぐばれちゃうなんて……。
「敵は、芹沢以下3名。
討手は……俺、山南さん、総司、原田の4名」
「えー、俺と一くん、あと新八っつぁんは?土方さん」
平助くんが、不満の声を漏らす。