幕末オオカミ


こいつ……本気で、鬼だ。


芹沢がお梅さんを思う気持ちなんて、これっぽっちもわからないんだ。



「土方さん……あなたは……」



沖田の低い声が、頭の後から聞こえた。



「……それならばどうして、楓を巻き込んだ。

暗殺の事実を知ってしまった以上、こいつは……」


「無論、死ぬまで新撰組から出すわけにはいかねぇな」


「な……っ」



声を上げたのは、平助くんだった。


死ぬまで……出すわけには、いかない?



「秘密をしっちまったからな。

逃げられるなんて、思うんじゃねぇぞ?

ま、元は忍だから、それくらいの覚悟はあると思うがな」



土方副長は、うっすらと笑ったままだった。


その後では近藤局長が、悲しそうな顔をしてうつむく。


もう、誰も後戻りはできない……。





あたしたちは、


新撰組として生きて、


新撰組として死ぬ事しか、


許されない──。



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