幕末オオカミ




あたしは沖田に送られて、八木邸に戻った。


芹沢一派の動きを監視するためだ。


本当なら、絶対拒否する任務だけど、近藤先生に頭を下げられてしまって、結局断れなかった。



「じゃあ……明日、芹沢たちが出かけたら、蔵に戻ってろよ」


「…………」



沖田の言葉に、うなずきだけで返す。


わかってるよ。


あたしだって、人が殺されるのを見て喜ぶ趣味はない。



「……悪いな……」



沖田は別れ際、ぼそりと零した。


あたしは、返事ができなかった。


沖田に謝ってもらう問題じゃないし。


浅葱色の隊服を着た、広い空のような背中を、ただ見送った。


……やばい。


なんだかわからないけど、泣きそうだ……



「何をしておるんじゃ?」


「わぁぁぁぁッ!!」



突然、後から声をかけられた。


ふりむくとそこには、大きなお腹の芹沢がいた。


途端に心臓が跳ね、汗がふきだす。



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