幕末オオカミ
「ほ、本当だもん!!」
そりゃあ、大奥は綺麗な人しか入れない。
あたしはお世辞にもキレイとは言い難くて、今でもどうして側室になれたのか、不明だ。
だけど、本当にそこにいたんだもん。
完全にバカにしてやがる……こいつら。
「い、いやいや、それなりの格好をさせれば……ぶっ!
すまない……はははは……」
父さん、もとい、近藤まで!!
ひどすぎる……!
「あ、あんたたちに、わかるもんかっ!!」
あたしは声をはりあげた。
「そーだよっ、あたしはこんなだから、大奥で浮きっぱなしだったよ!
2年も上様に無視されるわ、他の側室に陰湿ないじめを受けるわでさんざんだったよ!」
涙が、こみ上げた。
悔しい──。
三人は、いつの間にか黙っていた。
「わからないだろう?
元くの一のお手つきにもならない側室候補が、大奥でどんな扱いを受けるか……」
さらに悪かったのは、役立たずの烙印を押されたにも関わらず、里に帰してもらえないことだった。
大奥や城の内部のことを、外でベラベラ話されては困るから。