幕末オオカミ


「ほ、本当だもん!!」


そりゃあ、大奥は綺麗な人しか入れない。


あたしはお世辞にもキレイとは言い難くて、今でもどうして側室になれたのか、不明だ。


だけど、本当にそこにいたんだもん。


完全にバカにしてやがる……こいつら。


「い、いやいや、それなりの格好をさせれば……ぶっ!
すまない……はははは……」


父さん、もとい、近藤まで!!


ひどすぎる……!


「あ、あんたたちに、わかるもんかっ!!」


あたしは声をはりあげた。


「そーだよっ、あたしはこんなだから、大奥で浮きっぱなしだったよ!

2年も上様に無視されるわ、他の側室に陰湿ないじめを受けるわでさんざんだったよ!」


涙が、こみ上げた。


悔しい──。


三人は、いつの間にか黙っていた。


「わからないだろう?

元くの一のお手つきにもならない側室候補が、大奥でどんな扱いを受けるか……」


さらに悪かったのは、役立たずの烙印を押されたにも関わらず、里に帰してもらえないことだった。


大奥や城の内部のことを、外でベラベラ話されては困るから。





< 21 / 490 >

この作品をシェア

pagetop