幕末オオカミ


新見の追悼会を島原で行った芹沢たちは、ぐでんぐでんに酔っ払っていた。


あたしはそれぞれが床に入り、寝付くまでを見届けなければならない。


外はどしゃぶり。


まるで、あたしの心の中みたいに、空気が湿ってざわざわと鳴っていた。



「お梅、こっちに来い」


「いやや、酒くさい」


「そんなこと言わんと……のう、お梅よ」


「…………」



お梅さんはしぶしぶ、芹沢と一緒の床に入る。


今日は珍しく、寝ないで待ってたんだな……。


あたしはその様子を、天井裏から確認。



「お梅……」



芹沢はお梅さんの襦袢を脱がしにかかる。


お梅さんは、いやいやながらそれに従っている。


……どうしよう。


殺人現場以上に、今から死ぬ人達の秘め事なんか見たくないんだけど……。



あたしはそっと、のぞき穴から顔を離した。


他の人たちの様子を見に行こう……。


そう思って腰を上げかけた時、声が聞こえてきた。



「お梅……愛しておるぞ……」


「芹沢せんせ……」


「すまんのう、無理やりつれてきて、すまんかった。

じゃから、今夜は……大事にさせてくれ……」



ぐ、と喉が詰まるような感覚。


気づけば、涙がそこまで溢れそうになっていた。


< 210 / 490 >

この作品をシェア

pagetop