幕末オオカミ
新見の追悼会を島原で行った芹沢たちは、ぐでんぐでんに酔っ払っていた。
あたしはそれぞれが床に入り、寝付くまでを見届けなければならない。
外はどしゃぶり。
まるで、あたしの心の中みたいに、空気が湿ってざわざわと鳴っていた。
「お梅、こっちに来い」
「いやや、酒くさい」
「そんなこと言わんと……のう、お梅よ」
「…………」
お梅さんはしぶしぶ、芹沢と一緒の床に入る。
今日は珍しく、寝ないで待ってたんだな……。
あたしはその様子を、天井裏から確認。
「お梅……」
芹沢はお梅さんの襦袢を脱がしにかかる。
お梅さんは、いやいやながらそれに従っている。
……どうしよう。
殺人現場以上に、今から死ぬ人達の秘め事なんか見たくないんだけど……。
あたしはそっと、のぞき穴から顔を離した。
他の人たちの様子を見に行こう……。
そう思って腰を上げかけた時、声が聞こえてきた。
「お梅……愛しておるぞ……」
「芹沢せんせ……」
「すまんのう、無理やりつれてきて、すまんかった。
じゃから、今夜は……大事にさせてくれ……」
ぐ、と喉が詰まるような感覚。
気づけば、涙がそこまで溢れそうになっていた。