幕末オオカミ
八木邸の裏口から顔を出す。
するとそこには町人の格好をして、ずぶ濡れのまま待つ山崎監察がいた。
「4名とも、眠りました。
芹沢、お梅、平山は母屋の玄関奥の座敷、他の二人は離れの南座敷です」
あたしが機械的に言うと、山崎監察はだまってうなずく。
「ご苦労様」
それだけ言って、泥をはねながら、あっという間に豪雨の闇の中へ消えていった。
雨はすぐに、あたしの全身も濡らしていく。
「うっ……ぐす……っ」
頬の上を、涙がつたっていく。
しかし、すぐにそれは、雨に洗い流された。
帰らなきゃ…………。