幕末オオカミ
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俺が島原の角屋に着いたのは、予定時刻より少し送れてからだった。
「なんじゃ沖田、遅かったのう」
「すみません、芹沢先生」
「駆けつけ一杯!ホレ、飲まんか!」
「いやいや、お酌は俺にさせてくださいよ」
芹沢は既に酔っていた。
それもそのはず。
芹沢派だけでなく、近藤派も彼に次々に酒をすすめていたからだ。
酩酊させれば、後の仕事が楽になるから……。
「総司、どこへ行ってた」
「土方さん、顔が怖いですよ。
別に、どこというほどのところではありません」
「……なら、いいけどよ」
幹部席から離れた土方さんが、俺にひそひそとはなしかけてきた。
俺は普段どおりに返す。
実は俺は、ここへ来る前、八木邸の周りをウロウロしていた。
あいつの様子が気になったから……。
しかしあいつ……楓は、八木邸から姿を見せなかった。
子供達と話す声だけを聞けば、何も変わったことはないみたいだ。
実を言えば……
隊士のほとんどが屯所にいないうちに、楓は脱走するんじゃないか、と思っていた。