幕末オオカミ
もう、終わったんだろうか……
大人しく蔵に帰ったのはいいものの、結局気になって眠れずにいた。
まだ、外は暗い。
雨が、涙のようにしとしとと降り続く音がする。
「…………え?」
幻聴かと思った。
蔵の戸が、軽く叩かれたような気がしたんだ。
あたしは布団から飛び起き、髪も解いたまま、襦袢の上に羽織をかけ、入口に急いだ。
まさか、まさか、誰か怪我をした……!?
返り討ちにされた……!?
色んな不安が蠢く頭を振り払って、あたしは外に声をかけた。
「誰かいるの?」
返事はなかった。
代わりに、とん、と戸に何かがぶつかる音がした。
それはあたしの頭より、ずっと上。
そんなところに届く奴は、一人しか心当たりがない。
「沖田……?」
その戸を開けてやると、そこにはずぶ濡れの沖田が立っていた。