幕末オオカミ
「……お前な、『伏せ』はやめろよ……
犬じゃねぇんだから」
「別にいいじゃん、気合が入ればなんだって」
「ちっ…………」
のっそり立ち上がった総司は、忌々しげにオデコのお札をピッとはがした。
そう、斉藤先生くらいの使い手なら、気迫だけでいいみたいなんだけど。
あたしはまだ、斉藤先生の霊力を借りたお札を使わなければならない段階なんだ。
「帰ろうか。皆心配するよ」
「そうだな。切腹したくねぇしな」
あたしたちは、並んで屯所に歩き出した。
背後には、今夜一人になった総司を襲った、無謀な浪士達の遺体が転がっていた。