幕末オオカミ
──芹沢を総司が斬った、あの日から……。
あたしたちは、何も変わらなかった。
あれ?
って思ってるのは、あたしだけみたいだ。
総司はあのあと、『すまない』と、そう一言言って、蔵を出て行ってしまった。
次の日に顔を合わせた時は、いつもの顔で、『よぉ』と、言っただけだった。
あたしも、何も突っ込めなくて……『おはよう、総司』そう言っただけだった。
だって……
きっと、総司は本当は、弱い自分なんか見せたくなかったんだと思うから。
本音を吐露したのは、あの一瞬だけ。
もう、それを蒸し返すのはよそうと思ったんだ。
『……おはよう』
総司は名前を呼ばれても、別段嫌そうな顔はしなかった。
だから、『沖田』ではなく、『総司』と呼ぶことにした。
それだけだ。
それ以外、何の変化も進展も、ナシ……。