幕末オオカミ
しかし、鬼副長がタダであたしの境遇を良くしてくれるはずがない。
「小娘、今日から総司と同室な」
そう言われたのは、袴でルンルン歩き回っていた1ヶ月前くらいのこと……
「「はぁ!?」」
あたしと総司は副長室で声をそろえた。
「平隊士と一緒に雑魚寝させるわけには、いかねえからな」
「いっ、いいですっ!あたし、蔵で寝起きしますから!」
「ほー、いいのか?
お前がそこにいるってのは、あっという間に有名になるぞ。
最初に襲いにくるのは、誰だろうなぁ……」
こっ、この鬼……!!
ここの人たちは女なら誰でもいいみたいだし、いくらあたしでも貞操が危ないっていうのか……。
「総司と一緒なら、夜這いしようなんて命知らずな奴はいないだろう。
しかも斉藤も同じ部屋だ。
治安的には万全だぜ?感謝しろよな」
ひっひっひ、と鬼副長は不敵に笑った。
「あー、あの、副長!
斉藤先生は承知したんですか?」
「斉藤は武士だからな。
上司の命令を素直に受け入れ、別段動揺した様子もなかった。
男たるもの、ああでなくてはいかんな。
なあ、総司?」