幕末オオカミ
武士である以上、いつでも死ぬ覚悟はできている。
いや、できていなければならない。
それを教えてくれたのもまた、芹沢だった。
まぁ、敵にやられて死ぬのと、味方に裏切られて死ぬのじゃ、無念の度合いが全然違うだろうけど……。
「さて……俺達も行こうか」
「はい」
斉藤先生に促され、平助くんの後を歩き出した。
その時だった。
あたしたちがいる林の中を、一陣の風が吹き抜けた。
「なんだ?」
平助くんが振り返り、林の奥をにらみつける。
しかしそこには、誰もいない。
ただ、あたしたちを見ている視線だけを感じる……。
「……藤堂、お前は処理を頼む。
俺は少し、林を探ってみる」
「うん……気をつけろよ?」
「あ、あたしも行きます!」
「……そうか。では、来い」
そうしてあたしと斉藤先生は、林の奥へ歩いていった。
そこに何が待っているとも知らずに……。