幕末オオカミ
風はもう、すっかり冷たくなっていた。
斉藤先生の唇から、白い息がこぼれる。
「……良からぬ気配を感じる……わかるか?」
「はい…………」
「用心しろ」
あたしたちにねっとりと絡みつく視線の出所を探し、斉藤先生は意識を集中しながら歩いた。
あたしは、その後に続く。
足元の落ち葉を踏み、小枝がぱきりと小さな音を立てた。
その時──。
「危ない!!」
斉藤先生が、あたしを突き飛ばした。
「っ!!」
あたしはとっさに体勢を整え、さらに後へ跳ぶ。
離れた地面に、トトト、と連続して何かが突き刺さった。
突然の襲撃。
「何者だ!」
斉藤先生が空中に怒鳴る。
よく見ると、地面に突き刺さっていたのは、灰色に光る十字手裏剣だった。
「忍……!?」