幕末オオカミ
沖田は不満げな声を出した。
「何でですか、土方さん。
全然似てないじゃないっすか」
「似てなくてもいいんだよ。
とにかくお前の妹だって言えば、他の隊士は手を出せないだろう」
「そうだな、総司の妹に手をだすバカはいないな」
それって、どういうこと?
「誰も、総司を敵に回したくはねえもんな」
「……お二方とも……
それは、俺の腕を認めてるのか?
それとも、面白がってるのか?」
「もちろん、前者だよ」
近藤にそう言われれば、沖田は言い返せない。
三人の関係性が、だんだんわかってきたな……。
そう、多分、この沖田は強いんだ。
新撰組の他の誰も、敵わないほどに……。
そして近藤は、この沖田から絶大な信頼を寄せられている。
「じゃあ、よろしくな、楓くん」
近藤が、その厚くて大きな手のひらを差し出す。
笑った顔には、くっきりとえくぼが浮かんでいた。
「……はい!!」
あたしは、それを握り返した。
その後では……。
沖田が苦々しい顔をしていたのを、土方がため息をついて見ていた。