幕末オオカミ
「……おい」
「…………」
「お前、泣いてんのか?」
総司の声が、優しく揺らいだ。
ぽた、と雫がひとつ落ちて、畳にシミをつくる。
やだ……。
あたし、泣いてるの?
いつもみたいに、言い返さなきゃ。
こんなことで泣いてたら、余計に軽蔑される。
でも。
胸が痛い。
責任だなんて、言ってほしくなかった。
好きだから夫婦になってほしいと言われたら、どんなに嬉しかっただろう。
「……だよな。ムリに人狼と夫婦になんかなりたくないよな」
総司はどこか寂しそうに笑う。
「ちがっ……人狼は関係ないよ!
ただ、突然のことで色々混乱してて……」
「……そっか。悪かったな、混乱させるようなこと言って」
総司はあたしの頭に手を置いた。
「……ううん……」
優しい声で謝られて、余計に涙があふれる。
「まったく……いつもの威勢はどうしたんだよ……」