幕末オオカミ
3. 追われる理由
『楓……』
あたしを優しく呼ぶ声がする。
息が苦しい。
体中がだるい。
汗だくの体で、名前を呼ばれたあたしは、必死にまぶたを開ける。
そこに見えた、あたしの顔をのぞきこんだ人物は……
『母さん……?』
最後に見たときより、少し若い母さんだった。
なんで?
母さん、死んだんじゃなかったの?
『母さん……』
『大丈夫よ。じき、楽になるから』
自分の声も、自分じゃないみたいに高い。
ああ、これはあたしが子供の頃の夢なのか。
やけに現実的だな……。
『ごめんね……楓……』
遠くなっていく意識のすみに、母さんの懺悔が聞こえた気がした。