幕末オオカミ
「で……、楓」
「……総司……?」
「大丈夫か?だいぶうなされてた」
心配そうにあたしをのぞきこむ総司の顔。
それを見て、苦しい息が肺から抜けていった。
「総司……」
あたしは総司に手を差し出した。
総司はそれをにぎり、あたしを起こしてくれる。
そのまま抱きついてしまいたい衝動を、必死に抑えた。
「どうした」
「昔の……夢を見た……」
「陽炎ってやつのか」
「違う。あれは……」
間違いなく、母さんだった。
きっと、病気か何かにかかったあたしを、母さんが看病してくれていたんだろう。
そんな懐かしい記憶。
それなのに……
愛しい母の面影を見たのに、どうしてこんなに不安なの……?
「何があった」
斉藤先生も起きて、こちらを見つめた。
「……いえ……大丈夫です」