幕末オオカミ
内側から鍵をかけ、着物を脱ぐ。
こういうとき、女は不便だよな。
男ならガーッと脱いで、井戸の水を頭からかぶれば、それで済むのに。
いや、もう冬だから無理か……凍死しちゃうな。
冷たい井戸水で体をふくと、やっと頭がはっきりしてきた。
「陽炎……」
考えるのは、その事ばかり。
きっと、そのせいで村にいたときの夢なんか見たんだ。
ふと明り取りの窓を見上げる。
そこに、あるはずのないものを発見してしまった。
「!!陽炎……!!」
「シーッ」
狭い隙間からのぞいていた紫色の目がきらりと光り、窓枠を音もなくはずした。
そして、そこからあたしの目の前に着地する。
「傷つけたりしないから、声を出さないで。
そんな姿を、あいつに見られたくなかったらね」
陽炎はニヤニヤと笑いながら言った。
あたしは着物をつかみ、体を隠す。
総司のやつっ、ちゃんと見張ってるのかよ!?
あっさり敵が屯所の中に入ってきちゃってるじゃん!
「昨日、言い忘れたことがあってさ」
「な、なによ……」