幕末オオカミ
あたしたちは声を殺しながら話す。
総司が蔵の入口にいるからだ。
体を隠しながら、背後に置いたはずの武器を片手で探す。
しかし、冬の寒さのためか手がかじかんで、うまくいかない。
「そんなに警戒するなって。
俺はお前を傷つけるつもりはないよ。
3日猶予をあげるって、約束したんだから」
「早く……要件を言って」
いくら蔵の中だろうが、真冬だぞ、おい。
裸でいるあたしの身にもなってくれ。
「あーそうそう。
俺、お前が上様に執着される理由、話してなかったよね?」
「……!」
「新撰組がいたから、教えてあげられなかった。
あいつらが聞いたら、楓はあいつらに利用されちゃうからね」
「どういうこと……?」
そういえば、聞いてない。
何故、今さら上様があたしを連れ戻そうとしてるのか……
大奥の秘密を守るため?
それなら、新撰組に隠すことはないはず……。
「上様がほしいのはね、楓の血なんだよ」
陽炎は、声を殺してあたしに囁いた。