幕末オオカミ
「血……?」
「正確に言えば、体液全部」
「わかりやすく言って」
夢の中の息苦しさが戻ってくる。
そして、得体の知れない不安も……。
そんなあたしを面白そうに見つめながら、陽炎は淡々と言った。
「楓の血や体液はね……楓のご両親の術によって、呪いや妖術、あと病気の薬になってるんだ」
「……は……?」
「お前の血は、万病に効く万能薬なんだよ」
「何、それ……」
「あー、やっぱり知らなかったんだ。
そうだよね、おじさんとおばさん、その話する前に死んじゃったもんね」
うんうん、と陽炎は一人で勝手にうなずいた。
「お前の家系は岡崎一族のなかでも特殊な家系なんだ。
様々な毒や薬を体内に入れ、抗体を作る。
さらには呪いなんかも受けて。
楓、何回もおばさんに殺されかけたの、覚えてない?」
「……!」
すると、あの夢は……
母さんが、あたしの体に抗体を作るため、毒か呪いをわざとあたしに……
だから、謝ってたの……?
突然すぎて、わけがわからない。
そのはずなのに、あたしの血だけは、陽炎の言葉を受け入れているみたいだった。