幕末オオカミ


「だから、上様はお前に手をつけず、大事にとっておかれたんだよ。

子供ができて出産なんかしたら、大量の血が出ていっちゃう。

難産で死んでしまう可能性もあるしね。

そんなのもったいないじゃない。

とにかく、城に帰れば、一生大事にしてもらえるよ」



そんなこと……望むもんか。




「それで……上様がご病気になられたら、あたしを殺してその血を薬にするわけでしょ?」


「バッカだなあ、楓。
そんなことするはずないじゃない。

そこは殺さないように、うまくやってくれるよ。

どんどん新しい血を作ってもらうためにね」



陽炎は相変わらず笑っている。


それとは対照的に、あたしの体はこわばるばかりだった。


そんなの……今までと同じ。


飼い殺しにされるだけじゃないか。


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