幕末オオカミ
「うーん、突然こんなこと聞かされても、心の整理つかないよね。
ま、約束は守るよ。
期日までに、心を決めておいて」
「…………」
あたしは何も返さずにいた。
今はこちらの準備も整ってない。
帰ってもらったほうがいい。
頭も……ぐちゃぐちゃだから。
「大奥でも新撰組でも一緒でしょ。
秘密を守るために、出て行くことは許されない。
なら、常に戦いに身を置かなきゃいけない新撰組より、大奥のほうが楽じゃない」
「……そう、かもね」
「納得してない顔。
まぁいいや。風邪ひかないようにね」
そういい残し、陽炎はあっという間に姿を消した。
「へ、ぷし!!」
緊張の糸が緩んだ途端、くしゃみ一発。
風邪ひかないようにって……もう引いちゃったんじゃないか?
あたしの血が本当に万能薬だなんて言うなら、風邪もひかないんじゃないの?
「おい、遅いぞ。大丈夫か」
総司の声が、蔵の外からする。
急いで着替えて、そちらへ向かった。