幕末オオカミ


どうして何も言わなかったのに、そんなことがコイツにわかるのか。


じゃあ、なくて。


それ、ひどくないか!?


人をぬか喜びさせといて!!



「明日に、気が変わったと言え。

そうすれば、近藤先生が、女子(おなご)にあった、別の奉公先を探してくれるだろう」


「別のって……まさか、島原……」


島原は、京の有名な廓街の名。


「……それはないだろう。局長はお前に同情していたみたいだから。

きっと、良い勤め先を見つけてくれる。

あの方は、そういうお方だ」


同情って、あたしの過去のこと?


そういえばあたし、興奮していたとはいえ……。


なんて、恥さらしなことをしてしまったんだろう……。


「大奥にいても、一度も上様のお手つきにならなかった。

そんな娘が、島原で売れるわけないもんね……」


しゅーんとしてしまうと、沖田はあたしから一歩ひいた。


「そんなことはねえと思うけど……近藤局長は人を売るようなマネはしねえってことだよ」





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