幕末オオカミ


「おい」



屯所を出る準備をしていた時、声をかけてきたのは総司だった。



「土方さんに言われた。一緒に行くぞ」



総司はムッツリとした顔で言った。

何か怒っているみたいだ。

あたし、何かしただろうか。

ハラハラしながら、それを隠して言い返す。



「え……でも、忍装束だと街歩けないんですけど」


「中に着ていけよ。
昨日そうしようとしたんだろ?」


「……!」



あの、鬼副長!!


普通そんなこと、喋るか!?


信じられない……。



「あ、あの……」



脱走しようとしたなんて聞いたから、怒って呆れてるのか……。


どうしよう。

なんて言ったらいいんだろう。



「……っとに、バカじゃねえのか」


「すみません……」


「気をつかいすぎだ」



ぽん、と頭に手を置かれた。


それも、ほんの一瞬だった。







< 284 / 490 >

この作品をシェア

pagetop