幕末オオカミ
「おい」
屯所を出る準備をしていた時、声をかけてきたのは総司だった。
「土方さんに言われた。一緒に行くぞ」
総司はムッツリとした顔で言った。
何か怒っているみたいだ。
あたし、何かしただろうか。
ハラハラしながら、それを隠して言い返す。
「え……でも、忍装束だと街歩けないんですけど」
「中に着ていけよ。
昨日そうしようとしたんだろ?」
「……!」
あの、鬼副長!!
普通そんなこと、喋るか!?
信じられない……。
「あ、あの……」
脱走しようとしたなんて聞いたから、怒って呆れてるのか……。
どうしよう。
なんて言ったらいいんだろう。
「……っとに、バカじゃねえのか」
「すみません……」
「気をつかいすぎだ」
ぽん、と頭に手を置かれた。
それも、ほんの一瞬だった。