幕末オオカミ


次の瞬間には、あたしは総司に顔をのぞきこまれていた。


切れ長の目に、ドキリとした自分の姿が写る。



「約束は、守れよ。
お前が俺を見張るんだろ?」


「あ、あ……うん、はい、すみません」


「何赤くなってんだ」


「き、緊張で……」



戦いの前の緊張とは違いますけど。


っていうか、あんたがのぞきこんだりするからじゃん……。



「……土方さんに、何か言われたか?」


「な、何かって?」


「……別に……何もなきゃ、いいけど」



それを聞くなよぉぉぉ!!


副長は、総司があたしに惚れてるって言ってたよ♪


なんて言えるわけないし!


考えないようにしてるんだから。


期待して、裏切られたら、舞い上がっただけ損じゃん。


お願いだから、期待させないで。



「相談しろって言ったばかりだったのに。
そんなに俺は信用がねぇのか」



ぼつり。


そうこぼして、総司は屏風の向こうに行ってしまった。


さっさと着物を着ろ、という意味だ。



「そんな、違うよ、総司」



あたしは忍装束のまま、屏風の向こうの総司に話しかけた。





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