幕末オオカミ
「そりゃあ、土方さんの方が大人だからな。
信用もあるだろうけど」
屏風の向こうから、すねたような総司の声が聞こえる。
「何の話なのよ。
信用とか、そういうことじゃなくてね、あたしはただ皆に迷惑かけちゃいけないと思ったの!
運悪く副長に見つかって、全部見られちゃって……」
「全部見られた!?」
屏風の向こうから、総司が鬼のような形相で顔を出した。
「いやらしい意味じゃないってば!!
急いで出て行こうとした、部屋の状況だってば!!」
「お、おぉ……驚かすなよ……」
普通そんな勘違いしないよ……。
お前は年中発情期か。
「だから……」
「あぁ、もういい。
お前がどう思っていようが、俺には関係ない」
総司はそう言って、また屏風の向こうに隠れてしまった。
どうしてそういう、突き放すような言い方するのかな。
やっぱり、土方副長の勘違いだろうな。
総司があたしのことを好きだなんて……あるわけないよ。
あたしは小さなため息をつき、上に着る着物に手を伸ばした。
その時、屏風の向こうから、声がした。