幕末オオカミ
廃寺は全く手入れがされておらず、建物の枠組みがかろうじて残っているような状態だった。
蔦がその全体を覆い、ほとんど落ちてしまったような瓦が、足元に転がっていた。
敷地内は草が伸び放題。
誰も恐れて近寄らないのがよくわかる。
もののけや幽霊が苦手なあたしは、何かが出そうな雰囲気だけで、飲まれてしまいそうだった。
「おう、来たか」
最後に着いたあたしと総司に、土方副長が声をかけた。
平助くんと斉藤先生は、少し緊張したような顔をしている。
今日は全員、あの夜でも目立つ隊服は着ていなかった。
「そろそろか……」
斉藤先生が空を見上げる。
平助くんはあたしに寄り添い、「大丈夫だよ」と優しく声をかけた。