幕末オオカミ
「お願い。
あたしから、忍として生きる場所を奪わないで」
ずい、と沖田に近づいて、その目を見つめる。
すると沖田は、一歩、あとずさった。
「…………?」
ずい。
あたしが近づく。
ずさ。
沖田が引く。
困ったような、情けない顔で。
「……あんたもしかして、女が怖いの?」
そう聞くと沖田は、ぐっとノドで変な音を鳴らした。
「こ、怖くなんてねぇ。
苦手……いや、嫌いなだけだ。
嫌い。そう、嫌いなんだ」
「女が?」
さっきは、米俵みたいに担いだくせに。
「敵なら、容赦しない」
「味方だと、うまく喋れない」
「そう、緊張して……って、違う違う!」
沖田は首をぷるぷると横に振った。