幕末オオカミ


「沖田総司っ!!
あんたはバケモノなんかじゃない!!

立派な武士だってところを見せてやれっ!!」



その大声に、戦いは一時中断された。


陽炎は忌々しげに、総司は驚いたような目でこちらを見ていた。


そして……。



「副長……あれは……!」



斉藤先生まで、驚きの声を発した。


前かがみで獲物を狙っていたはずの総司の背が、徐々に真っ直ぐになっていったんだ。


相変わらず牙もしっぽも生えたままで。


総司は、ぎこちない動きで、刀に手をかけた。



「ぐぅ、る……」



喉から出るのはうなり声。


文字通り牙をむいた総司を見て、陽炎は笑った。



「バカじゃないの?
理性なくして、いつもの剣が使えるわけないじゃない。

ただ振りまわすだけなら、できるかもしれないけどね。

人狼には、爪と牙がお似合いだよ」



それは言うとおりかもしれなかった。


総司は爪が邪魔で、うまく柄が握れないようだ。



「モタモタしてたら、死ぬよ!!」



陽炎は笑いながら、再度両手に炎をまとう。












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