幕末オオカミ
陽炎の手をさするけど、そのぬくもりはだんだんと失われていく。
「早く屯所に運べ。
まだ間に合うかもしれねぇ」
副長が後から、あたしの肩を叩いた。
しかし……
「言っただろ、情けは無用。
任務に失敗したら、どうせ帰るところもない」
「陽炎……」
陽炎はあたしの目だけを見つめて、言った。
「あの、人狼……」
「総司だよ、あの人は沖田総司」
「沖田……あいつは、いつか必ず、楓を……傷つける」
「え……っ」
思いがけない警告に、一瞬涙が止まる。
「それでも……一緒にいるって、決めたなら……
後悔、しないようにね……」
注意深く聞いているのに、陽炎の声はだんだん小さくなっていく。
「陽炎、どういうこと?
ねえ、陽炎。死んじゃだめ……」
「……自分勝手な楓。
お前が新撰組を選んだ、結果なのに」
「ごめん……」
「ま、そういうとこが……
好きだったんだけどね……」