幕末オオカミ


「さーてとっ♪
まず、着物を貸してくれない?
あんたのせいで、濡れちゃったからさぁ」


そう、さっきから襟がべたべたで気持ち悪かったんだよねー。


髪も濡れたし……


「へっ、くし!」


ぶる……。


急に、寒気がやってきた。


「兄上ぇ、寒い」


「ば、ばか、あまり寄るな!」


あ、そうか。


沖田の目線からだと、濡れて逆さづりになってはだけた胸元が、ばっちり見えるわけだ……。


それで、異常に照れてたのか。


「胸元、見ないでよっ」


「見てねえよ!
お前が近寄るから見えただけだ!」


気づいたら、こちらまで恥ずかしくなっちゃった。


後を向いて、襟を直す。


「へっぷし!」


すると、またくしゃみが一つ。


「ああ、もう……」


沖田は忌々しそうに舌打ちし、蔵の中をごそごそと捜し物をしだした。









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