幕末オオカミ


「…ごめ……っ、陽炎、ごめん……」



今さら言ったって、もう遅い。


自分勝手な楓。


本当だね、陽炎。


謝ったって、許されるわけないのにね。



冷たい地面に座り込んだままでいると、突然背中に、ふわりとぬくもりが落ちてきた。



「……嫌なら、言え」



頭の後でする、低い声。


なんだか、こんなようなことが前にもあったような気がする。


後から抱きしめられて、それで……。


そのときはアンタの方が弱ってたよね。



「……総司……」


「悪かった。意地悪な質問をした」


「え……?」


「勝ってくれと言われれば、許されるような気がしたんだ……」



搾り出すような声は、いつの間にか耳の後に近づいていた。



「悪かった。
最後の最後で、理性が飛んだ。
本当なら…助けることができたかもしれないのに」


「総……」


「どうして、俺はこうなんだろうな……」



いつの間にか回されていた腕に、力がこもる。


その右手は、爪が無残に傷つき、血をにじませていた。


< 320 / 490 >

この作品をシェア

pagetop