幕末オオカミ
「…ごめ……っ、陽炎、ごめん……」
今さら言ったって、もう遅い。
自分勝手な楓。
本当だね、陽炎。
謝ったって、許されるわけないのにね。
冷たい地面に座り込んだままでいると、突然背中に、ふわりとぬくもりが落ちてきた。
「……嫌なら、言え」
頭の後でする、低い声。
なんだか、こんなようなことが前にもあったような気がする。
後から抱きしめられて、それで……。
そのときはアンタの方が弱ってたよね。
「……総司……」
「悪かった。意地悪な質問をした」
「え……?」
「勝ってくれと言われれば、許されるような気がしたんだ……」
搾り出すような声は、いつの間にか耳の後に近づいていた。
「悪かった。
最後の最後で、理性が飛んだ。
本当なら…助けることができたかもしれないのに」
「総……」
「どうして、俺はこうなんだろうな……」
いつの間にか回されていた腕に、力がこもる。
その右手は、爪が無残に傷つき、血をにじませていた。