幕末オオカミ
涙はいまだ、ぽろぽろと溢れ出す。
「総司は悪くないよ。
あたしが、選んだんだ……」
陽炎より、アンタを。
新撰組を。
あたしは、選んだ。
「忍である以上、いつでも死ぬ覚悟はあったはず。
陽炎は一流の忍だもの」
自分に言い聞かせるように、あたしは言う。
見上げた総司は、また泣きそうな顔をしていた。
「……無理しなくていい」
「……してないよ……」
「いいから、泣け」
乱暴に頭を抱かれ、胸にくっつけられる。
背中が折れそうなくらい、総司はあたしを強く抱きしめた。
「お前のせいじゃない。
無理に引き止めた俺のせいだ」
「痛い……総司、気持ちは嬉しいけど、痛い」
「あぁ?あ、悪い……」
色んな意味で、呼吸困難になるから。
腕をゆるめた総司は、叱られた飼い犬の目をしていた。
「もう……痛みで涙がどっかにいったよ」
本当はさっき、涙も鼻水も総司の着物に吸収されたんだけど。